ゲームセンター=非行の温床

ゲームセンターが非行の温床とされた経緯について調べてみました。調べている間に「所さんの20世紀解体新書」という本を見つけ、その中で糸井重里が「遊べるところがないから、仕方がなくホモバーまでインベーダーをやりに行った」と発言していて思わず噴きました。ネタに事欠かない人だなぁ。


スペースインベーダーの人気はとても激しいものでした。喫茶店のみならず、スナックやレストラン、ホテルにまでも筐体が設置され、日本人は金と暇さえあればインベーダーと戦っていると表現してもよいほどブームになりました。当時の調査によれば、一人当たりの平均にして月4,900円をインベーダーゲームにつぎ込んでいたそうです。ピーク時には全国に30万台以上筐体があり、1台につき1日10,000 〜 15,000円ほど稼ぐとも言われていました。あまりにのめり込んだ児童がその日のうちに3,000円以上もつぎ込むという異常な事態も引き起こしていたそうです。

スペースインベーダーを遊ぶためのお金を必要とするあまり、児童の中には窃盗や空き巣を働くなどの犯罪を起こしてしまう者も現れました。窃盗や空き巣以外の犯罪に手を染める人間もいました。5円玉にセロテープを巻きつけて偽造100円玉を作り、ゲーム機の投入口へ入れて遊ぶ手口が増えて行ったのです。その手口が増えて行ったのは丁度、児童達が春休みに入った時期と重なる3月下旬辺りのことだったそうで、1979年5月に発行された毎日新聞朝日新聞がその事件を扱った内容を取り上げていました。それらの新聞が伝えた内容によれば、渋谷区にあったゲームセンターにおいて、設置していた11台のインベーダーゲーム機の中から偽造100円玉を20枚発見されたのが最初で、以降、そのゲームセンターでは見張りを立てて偽造100円玉を使用した小学生を捕まえることに成功したのですが、それでも偽造100円玉は減ることはなかったそうです。平日は1日30枚程度が見つかるような日が続き、休日では1日50枚も利用されていることもあったそうです。そのように 次第に被害額が大きくなっていったことから同ゲームセンターは渋谷署に届け出をしました。そのことで偽造100円玉の手口が明らかになったのです。警察がさらに調べてみると浅草や新宿、成城学園前などでも同様の手口を使った偽造100円玉が見つかり、口コミで広がったものではないかと推測したそうです。

このような偽造100円玉はインベーダー以外でも悪用されるようになり、同年4月末日には中央線国分寺駅の自動券売機で大量に見つかるようになりました。その偽造100円玉が顕著に利用されていたのが中央線の国分寺〜新宿間、山手線各駅のうち、主に学生が利用する駅であったため、日本国有鉄道(国鉄:現JR)は5月7日より見張りを立てて監視を始め、実際に偽造100円玉を利用している19歳の少年を逮捕したとのことです。この頃の券売機は硬貨の認識能力も低かったのですが、以降は改良されていき認識能力が上がっていったため、この偽造100円玉を使った犯罪は徐々に減っていくことになります。

このような社会的問題を受けて、警察庁インベーダーゲームの実態を調べると同時に全国都道府県の各県警に対し、非行の監視や暴力団介入の取り締まりを指示するようになります。このような経緯もあり、教育委員会やPTAもゲームセンターを「非行の温床」「犯罪の温床」としてと見做すようになっていきました。学業規則に「ゲームセンターへ行ってはいけない」と明示する学校も出てきたほどです。業界団体も「15歳未満は保護者同伴ではなければゲームセンターに入れない」という自粛処置を取るまでに至りました。インベーダーに関わる犯罪は他にもあり、それも非常に悪いタイミングで起こりました。それは5月の上旬から中旬にかけて覚せい剤を利用した者がテーブルタイプのスペースインベーダー筐体の脚部に麻薬を隠し、高等裁判所で判決を下されるといった事件です。このようにしてインベーダーは徐々に悪者として見なされていくようになります。

参考文献
昭和史辞典 金融恐慌からインベーダー・ゲームまで(毎日新聞社刊)、毎日新聞朝日新聞、読売新聞、裁判判例

所さんの20世紀解体新書

所さんの20世紀解体新書