女性にも受けた「ギャラガ」

シューティングゲームの中でもっと語られてもよいゲーム「ギャラガ」について抽出してみました。

ギャラガのプランナーである横山茂はナムコモノリスソフト、ベックの取締役として活躍していて、リッジレーサーシリーズ、テイルズシリーズ、ゼノギアスシリーズのプロデューサーを務めている模様。


他社がギャラクシアンを追従する中、ナムコギャラクシアンのゲーム性を更に発展させた続編「ギャラガ」(1981/9, ナムコ)を開発しました。ギャラガの操作はギャラクシアンと同じく2方向レバーで「ファイター」と呼ばれる自機を左右に動かし、ボタンでショットを発射するというものでしたが、今度は単発ショットではなく、2連射できるようになっていました。これは敵の動きがスピーディになったことに対応させたものでしょう。このゲームでの目玉は「合体によるパワーアップ」で、それはムーンクレスタと同じコンセプトのものです。しかし、合体方法はドッキングステージで行われるものではなく、プレイヤーが自分で合体したいときにある程度コントロールできるようにデザインされている点で異なっています。ギャラガでは敵のボスエイリアンと呼ばれるキャラクタが「トラクタービーム」というビームを発射して自機を捕らえようとしてきます。このビームに掴まってしまうと捕虜となり、残機がひとつ減ってしまいます。ところがそのボス・ギャラガから捕らわれた自機を奪還すると合体して「デュアル・ファイター」となることができ、力を合わせて反撃することができるというアイディアに昇華されているのです。しかし、誤って捕虜となっている自機を撃ってしまうとそのまま残機を失ってしまうというリスクや、合体して横幅が広がった分、自機の移動範囲が狭まって不利になるというリスクなど、うまくバランスが取られており、ゲームをよりスリリングなものにしているのです。

ギャラガには他にもたくさんのアイディアが盛り込まれています。数ステージごとに出現する「チャレンジングステージ」では、綺麗な軌跡を描いて飛んでくる敵キャラクタをすべて撃墜することで最大10,000点を得るという大チャンスが待っています。ギャラガはエブリエクステンド、つまり自機が数万点ごとに増えるように設定されているゲームであり、チャレンジングステージでいかに高得点を取るかがゲームを長く遊ぶためのカギになっています。チャレンジングステージでは敵は弾を一切撃ってきませんから、プレイヤーは点数を稼ぐことに集中できるようになっています。高得点を狙うポイントは他にも、ギャラガが変形し、3機に分裂して飛来する「特殊編隊」と呼ばれるボーナスキャラクタの存在があります。特殊編隊を3機全滅させると1,000 〜 3,000点のボーナスが入ります。この特殊編隊の存在によって、単に敵を撃ち落とそうとするプレイヤーをトリッキーな動きで誘って、少なくなりつつあるギャラガがすぐに絶滅させられないようにステージ内を撹乱してくるのです。

また、しっかりとゲームの中には緩急ができるように作られている点も見逃せません。例えば、ボス・ギャラガが攻撃している最中に撃破すると3秒間だけ敵のミサイル攻撃が収まります。他にもギャラガ自体の数が5匹以下までに減ると激しい「波状攻撃」をしかけてきます。ギャラガの動きも通常とは変化して自機の周りを一回転するなど、よりトリッキーな動きをしてプレイヤーを苦しめます。特にデュアル・ファイターになっている場合は激突されて破壊されることが多く、最後の一匹まで気が抜けないようになっています。

以上のような豊富なアイディアを盛り込まれ、調整期間だけでも半年をかけたギャラガでしたが、社内での評判でもショーに出品された際のオペレータ達からも非常に厳しい評価が下されました。それは見た目がギャラクシアンに似すぎているという指摘でした。しかし、いざ発売されてみると何ヶ月経ってもインカムが落ちないという予想に反した状態に陥りました。そのゲームの良さはプレイヤー達が一番に理解し、それをインカムという形で証明したのです。ギャラガは発売以来、常に高いインカムを保ち続け、ゲームが2年間もの間リピートして製造されるという超ロングヒット作品となっていったのです。その後も人気はなかなか衰えず、発売から4年ほど良好なインカムが得られたそうです。また、女性にもウケが良かったことでもギャラガは画期的でした。女性にも受けたシューティングゲームは後にも先にもこのギャラガだけかもしれません。

参考文献:パックマンのゲーム学入門、オールアバウトナムコ(B5版)